喜連川社会復帰促進センターを訪ねて その3
喜連川センターでは、職業訓練が4月に開講され、3~6か月間にわたり170~180人が受講し、全受刑者が入所中に1回は受講することになっているそうです。
開講されているのは、DTP科(パソコンでの広告制作)、コールセンター科(通信販売などのオペレーター)、ホームヘルパー科(定員10名)、園芸科、ビルクリーニング科、調理師科、クリーニング科、木工科などでした。
高齢の受刑者や身体疾患のある受刑者用に、モザイク科、窯業科、竹細工科もありましたが、これらは職業訓練というよりもリハビリプログラムといった様子でした。
調理場では、50人が作業していて、そのうち26人が民間の指導員の下で職業訓練中とのことでした。また、洗濯工場でも、民間指導員の下で近隣の病院のリネンのクリーニングを請け負い、訓練中でした。
他の刑務所でも職業訓練は提供されていますが、このような取り組みは企業の協力が必要となってくるので、まだそんなに多くはありません。
これをきっかけに、様々な企業が職業訓練プログラムを提供すれば、より多くの人の社会復帰に貢献できるのではないかと思います。
喜連川センターでは、職業訓練以外にも、すべての受刑者が、一般改善指導プログラムを受講するようになっており、認知の歪みを矯正するグループセッション(1つのグループは15人で、400~500人が受講している)や、行動適性化プログラムが行われていて、月に2回、全13回のコースで、刑務作業中の時間に作業を中断して1~2時間受講することになっているそうです。
そのほか、ダルクによる薬物依存症の回復プログラムや、筑波大学の教授が作成したプログラムなども提供され、毎月矯正指導日が設けられ、講話や視聴覚教材を利用した指導も行われているそうです。
さらに、障がいのある受刑者には、ちぎり絵やフラワーセラピーのプログラムを提供しているとのことでした。
これらのプログラムは、入札のときに企業グループが提案し、それを元に国と協議して作成したそうですが、施設の職員の説明によると、「まだ開始したばかりで出所後の効果ははかることができていない。今後、新しいものを取り入れて、変更する可能性もある」とのことでした。
高齢の受刑者や身体疾患のある受刑者の工場を見学した際は、粘土をこねる窯業、タイルを小さな枠に張り付けるモザイク作業、ロウソクの箱詰め作業を行っているのを見ましたが、ここにいる人たちは本当に刑務所に収容すべき人たちなのだろうかと疑問に思いました。
というのも、工場での作業中、受刑者はわき見が禁止されているので、私たち見学者と目を合わせることはないのですが、それでも、受刑者が、誰かが見学に来ていることを感じながら作業をしているということは、その様子から伝わってくるものです。少なくとも、他の施設の工場見学ではそうでした。
しかし、喜連川センターでは、それが全く感じられなかったのです。今まで見てきた工場とは反応が異なり、人が近くにいるのも関係なく、言われたとおりに黙々と手を動かしているという感じでした。
刑務官の説明でも、出所後社会復帰できない高齢や病気の受刑者は特別養護老人ホームに引き受けを依頼することもあるということで、この喜連川センターが、どこにも行くあてがない高齢者・障がい者の引き受け先になっているのかと思うと、なんともやりきれない思いになり、やはり、刑事政策だけでなく日本の福祉政策の根本を考えていかなくてはならないのではないかと強く感じました。
秋山映美さんの「監獄から社会へ」は、毎週金曜日更新です。
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