この森で、天使はバスを降りた
先日、『この森で、天使はバスを降りた』というミュージカルを観劇しました。実は、私はミュージカルを観るのが好きで、年に数回、気になる作品を観に行くんです。
『この森で、天使はバスを降りた』は、1996年のアメリカの映画をミュージカル化したものですが、映画は日本でも公開されていたので、もしかしたら、映画を観たという方もいらっしゃるかもしれません。
主演の大塚ちひろさんは迫力もあり、素敵な歌声を披露されていました。アメリカン・フォークやロック調の歌は、ミュージカル独特のセリフをメロディにのせて歌う大変難しそうな歌なのですが、実力のある役者さんが揃っていて、メロディがす~っと耳に入ってきました。
舞台はベトナム戦争後のアメリカ、主人公の女の子パーシーは、刑務所を仮釈放で出所して、紅葉がきれいで風光明媚な小さな町にやってきます。
小さな地方都市では、外から来るものはすぐに噂の対象となり、彼女が刑務所から来たということは、やがてみんなに知れ渡ります。
いつの時代も、どこにいても、刑務所から出所した人というのは、厄介者と思われ、自分たちの近くにいてほしくないと思われてしまうようです。
何かちょっとした事故があると、パーシーがやったのではないかと疑われ、なかなか信用してもらえません。
でも、保護観察の担当者者(物語の中では保安官)が紹介したレストランの仕事を頑張っているうちに、徐々に町になじんでいき、パーシーの提案によって、寂れていた町がにわかに活気づいていきます。
主人公のパーシーは、悲惨な幼少期を送り、刑務所に行くということになってしまったのですが、幼少期の環境が影響したのか、それとも刑務所での生活がそうさせてしまったのか、最初はちょっと付き合いにくそうな女の子でした。
しかし、ぶっきらぼうに人に対応していた彼女も、仕事に慣れ、町の人に受け入れられていくと、だんだん、年相応の女性に成長していくのです。
ありのままの自分を受け入れてくれる友人や居場所があるということが出所後の社会復帰にとって重要な要素であるということがこの物語の中でも描かれています。
さらに、自分のアイディアで町が活気づいたということも、主人公の女の子の立ち直りに大いに影響したことでしょう。
また、物語の中で、主人公の働いているレストラン主催で、エッセイコンテストを開催することになり、応募作品が読み上げられるシーンがあるのですが、そのエッセイの多くが、新たな居場所を求めているものばかりでした。
居場所を見つけることは、誰にとっても生きていく上で重要なことだということをあらためて感じました。
この物語はレストランで働く3人の女性が中心になっていますが、パーシーだけでなく、レストランの経営者のハンナ、レストランでパーシーと一緒に働くシェルビーも、みんな様々な悩みを抱えながら生きています。
刑務所から出所して社会にでるという、なかなか現実でも大変な問題をテーマにしている物語ですが、ところどころ日常のコミカルなやりとりが加えられていてクスッと笑えて、それでいて考えさせられる作品でした。
このミュージカルのパンフレットには「いつだって やり直せる。誰だって 自分を好きになれる」とあります。
主人公の女の子だけでなく、この物語に出てくる人、この物語を見ている人すべてに共通して言えるメッセージです。
誰でも大なり小なり失敗をして、悩みを抱えていると思いますが、そのような自分でも受け入れてもらえる場所があり、自分を好きになることができる、そのような社会を作っていくことができるといいですね。
映画はDVDにもなっているようですので、話の内容が気になる方はぜひご覧ください。ただし、ミュージカルのように歌はなく、結末が若干違うようです。
コメント
私の弟も、少年院出所後立ち直れず刑務所に行き、3年前に出所してきました。10代から20代前半の人生の輝かしいときを、自由に謳歌できなかったことは、彼にとって残念なことだと思います。
出所後は、しばらくフラフラしていました。今回のブログに書かれているように、学歴もなく、札付きの彼は、まともな仕事につくことができなかったからです。
しかし、去年、よい女性との出会いに恵まれて、彼女の励ましもあって立ち直り、今年結婚することができました。今は、彼女のお父様が経営する寿司屋で修行をしています。
犯してしまった罪は、法律に則って償うとして、出所後に彼らを受け入れる社会の度量も必要だと思います。それがなければ、再犯の可能性も高くなります。
また、一度、罪を犯してしまうと、それだけで繰り返す可能性が高くなると思うのです。その意味でも、厳罰化には反対です。
秋山さんのブログから、いろいろなことを学ばせていただいています。これからも楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
監獄人権センターにも出所後の生活の不安に関するお手紙が寄せられています。
弟さんは、周りの方の支援で社会復帰をはたされたとのこと、このようなお話をきくとほっとします。
法務省も就労支援などはじめたようですが、もっと多くの方に受刑者や出所者の生活に関心を持っていただければと思っています。
刑務所の外であっても生活が厳しく大変な時代ではありますが、一人でも多くの方が幸せを実感できる、そんな社会になるといいですね。
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